立志

「髪を切るのが上手になって、お店を開けば、

お客様がたくさん来てくれるはず！」

１８歳の少年だった僕は、不安と夢で胸一杯に上京、

いつかの開店を夢見て、技術の習得に没頭し１０年間を過ごし、

そして帰郷しました。

やっとの思いで開店を迎えた7年前の7月２５日。

僕の高まる鼓動と期待をよそに、お客様はいらっしゃいません。。。。

知らないお店に入ってきてくれる方はそうそういません。

そうです。

10年間自分の生まれた地元を顧みなかった僕に、

つながっている友達や知り合いは本当に少なかったのです。

また、高校時代に学んだはずの簿記さえ、いつしか忘れていました。

当然、最初の確定申告の時には青くなりました。

「お店を出したい！」との思いだけで、

商売をやるはずの地元の人との付き合いもおろそかにしてきたし、

夢の実現へ向けての準備もしてこなかった・・・。

自分の甘さに愕然・・・。

そうです。僕は世の中を全く知らなかったのです。

髪が少し切れるだけの世間知らずがここにいました。

そんな時でも、僕にあったのは、「一生懸命やること」だけでした。

そんな中、

「お店が安定するまでは、少し面倒みなきゃ！」

と、応援の意味を込め、ご来店くださった以前からの知り合いのお客様。

ご来店が少なく、凹みそうになっているとき、

知っている顔を見ることができて・・・本当にほっとしました。

人の温かさに触れ、その晩こっそり泣きました。

「どこの誰が中にいるのか、評判さえも分からないお店」に

勇気を持って飛び込んできてくださったお客様。

一生懸命やっているけど、結果がなかなか出ない僕に、

「きっと流行るよ。このお店は。」

不安を打ち消す優しい言葉にどれだけ励まされたかわかりません。

人の優しさに触れ、やっぱりこっそりと泣きました。

僕も結婚し、子どもを授かり、親になって

やっと気づかせていただきました。

『自分よりも大切にして欲しい人がいる』　と。

「うちの奥さん連れてくるよ」

「子どものカットもやってくれる？」

世の中で誰よりも大切な、大切な自分の家族をご紹介してくださるお客様。

お客様のそんな気持ちに応えられるよう、

精一杯「自分の大切な人」として扱わせていただきたいと思います。

思い返せば、まわりのみなさまの

温かさや優しさという、

大きな大きな力に背中を押して頂いたからこそ、

非力で非才な僕が歩いてこられた7年間だったと改めて感謝しております。

本当にありがとうございます。

最近、改めて「理髪館いとう」とひらがなで書いてみました。

縦に書いてみたり、文字に大小つけていろいろ書いてみると・・・。

理髪の仕事をとおして　お客様に感動を与える

店名の中に隠れていた僕たちの使命、目指す道に

恥ずかしながら7年たってやっとやっと、

出逢えたような気がしました。

今までお支え下さった温かいみなさまと、

これから出会うであろう、みなさまに

使命を忘れず、日々の自分自身の成長を目指し、

小さな感動を提供し続けられるお店であり続ける事を宣言して、

8年目の決意とさせていただきます。

ありがとうございます。

理髪館いとう　代表　伊藤規雄