僕のヒーロー


2020年12月16日

一度だけ
イジメられたことがある。
それは
小学校2年生の時。
と言っても
同級生や友達とかではなく
そのいじめっ子は
3つ年上の
5年生だったと思う。
彼とは掃除の班で一緒になった。
初対面でいきなり
僕の体型のことでバカにしてきて
当時僕は太っていて体格がよく
クラスの中でも後ろから2番目くらいに
背も高かったから
からかいたかったのだろうな
なんて失礼なやつだな
いやなやつだなと思いながらも
最初は聞き流していたが
どんどんエスカレートするので
うるさいな!みたいな感じで
言い返した。
そしたら
お前年下のくせに生意気だぞと
彼は怒り
小突いたり蹴ったりしてきた。
さすがにそんな理不尽なと
僕も頭にきて
かかっていったが
2年生が5年生に敵うはずもなく
軽くひねられた。
当然である。
その場には人がたくさんいたので
そのいじめっこの彼と僕は怒られ、
下級生を面倒みなきゃだめだよと
向こうが少し多めに先生から怒られた。
それで一件落着と思ったが
その彼は気が済まなかった。
今度は人のいない所や
人が見ていないのを確認して
蹴ったり叩いたりしてくる様になった。
毎回毎回掃除のたびに。
学校は楽しいが
一転、掃除の時間が嫌で嫌で
掃除の時間がなければいいのになと
何度も思った。
何度か先生に相談したが
その彼は先生の前ではいい子のフリして
しらばっくれたり謝ったりするけれど
次の日には
お前いいつけやがったなと
また殴ってきた。
その間何度か
反撃を試みるけど
毎回やられてしまう。
小学生の3歳差は大きく
圧倒的な力の前では
どうしても
何度やっても
負けてしまう
そのうち掃除の班が変わって
その彼とも毎日は会わなくなって
ホッとしていたが、
校舎の中で僕を見つけると
柱の陰や隅っこに引っ張り込み
また殴った。
その当時は
笑っていても
僕の心は
いつもどんよりと
晴れることがなかったと思う。
しかし、
その年の冬、
ちょっとだけ嬉しいことがあった。
おかあさんから新しい手袋を
買ってもらったんだ。
その当時流行っていた
みょ〜んと伸びる
毛糸素材の小さな手袋。
嬉しくって
ウキウキした。
その下ろしたての手袋を
早速つけて
友達の家に遊びにいこうと
雪の降る中歩いて出かけると
なんと!
目の前から
いじめっこが
歩いてきた。
さっと脇道に走って逃げたが
すぐに追いつかれ
襟首をつかまれ投げられた。
雪が降りたてで
水たまりのある地面に
思いっきり転んだ。
何度か蹴られた。
倒れてびしゃびしゃに濡れた
僕の姿をみて笑う彼。
この世に悪魔っているのなら
きっとこんな感じなんだろうなと思った。
せっかく買ってもらった
手袋はずぶ濡れになってしまった。
おかあさんの顔が思い浮かんできて
申し訳ないとても悲しい気持ちだった。
なんであの道
通っちゃったんだろ!
後悔しながら友達の家に行き
手袋をファンヒーターの前で乾かしてもらい
遊んでいるとなんだか焦げ臭いにおい。
なんと手袋はファンヒーターの熱で
黄色く焦げてしまっていた。
そのことがショックで
手袋がもともと青だったのか赤だったのか
全く思い出せないけれど
焦げた黄色とその匂いだけが
いまだに鮮明に思い出される
それからは
学校の中を歩くのも
外を歩くのも
そのいじめっこがいないかどうかを
気にしながらビクビクしながら
毎日を過ごした。
生きた心地がしなかった。
そんな日々が終わる日は
突然きた。
「お前、なんか困ったことあるのか?」
そう声をかけてくれたのは
4つ年上、6年生のUちゃんだった。
Uちゃんは、野球も上手、かけっこも早く、
頭も良くて人気者、憧れのお兄ちゃんだった。
「実は・・・。」
とこれまでのことを涙ながらに
Uちゃんに話すと
「よし!分かった!俺に任せろ!」
と言われ、その時は別れた。
何を任せるのか
任せたのかわからなかったが
その時は、Uちゃんが自分の味方になってくれるのかも!?
ということが
とても嬉しかった。
その日以来
イジメはピタリと止んだ・・・・。
いじめっこは
僕の顔を見ると
手を出したいけど出せなくて
悔しい!みたいな顔をしていて
きっとUちゃんが
言って聞かせてくれたのは
間違いないようだった。
ちゃんとお礼を言おうと
Uちゃんの姿を探すけど
Uちゃんは人気者なので
必ず人だかりの真ん中にいて
なかなか話しかけることができなかった。
春になり卒業式の日、
さっと通りすがりに
「Uちゃんありがとね!」
って言うくらいしかできなかった。
それ以来一度も会ったことはないけれど
あの地獄の様な日々
(大げさだけどその時はそう思った)
から僕を救ってくれた
Uちゃんは僕の恩人であり
ヒーローだった。
もう一度ちゃんとお礼が言いたいなぁ
ありがとうって言いたいなぁ
僕もUちゃんみたいな
困ってる人助けられる人に
なりたいよ!って
今でも思うんだ。
そして
顔も名前ももう思い出せない
3つも年下の子を半年以上も
イヤガラセを続けた彼は
2年生の僕にとっては
圧倒的な脅威だったが
同学年の中では
決して目立つタイプでも
体格が良かった訳でもなく
きっと当時
家庭なのか友達なのか学校なのか
どこかでよっぽどの
悩みやストレスを抱えてたのかな。
はけ口を求めて
自分より弱い子みつけて
発散していたのかな。
それもかわいそうな
子だな…。
なんて
今大人になって
思うことがある。
今日みたいに雪が降って
びちゃびちゃになった道路を見ると
黄色く焦げた手袋と
助けてくれたUちゃんのこと
いつも思い出すんだ。
僕を救ってくれた
昭和のヒーローが
確かにそこにいたことを。

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