アントキノキモチ


2019年03月06日

3月6日
今日は
僕が理容師を志し
東京へと旅立った日だ。

毎年この日を迎えると
新しい生活への
期待と不安が入り混じる

その時の感情が
18歳の自分に戻って
鮮やかに蘇ってくるんだけれど

今まで書いてこなかった
僕の中にある
もう一つの感情を
書き留めておこうと思う。

26年も前の話だから
もうそろそろ時刻ってことで
いいんじゃないだろうか。

高校三年生
18歳の時

好きな人ができた。

血気盛んな僕は
彼女に猛烈にアタックし
自分の気持ちも伝えた。

そして
高校卒業後には
理容師になるために
東京に行くことが決まっていると
もちろん彼女に話した。

その人は
一つ年上の社会人で
「理容師」さんだった。

年上で社会人の彼女は
同級生の女の子に比べても
数倍大人っぽかったし

僕よりも
だいぶ大人だった。

僕のことは名前で呼ばず
「貴方(あなた)は」
なんて呼んでくれるわりに

私の方が年上なんだからねって
しっかりお姉さんぶって
僕を子ども扱いする。

僕が投げる直球が
スルスルとかわされる度に

僕より一つしか違わないくせに!

なんて思っていたけれど
それも決してイヤだなとは
思わなかった。

半ば強引に
理由をつけては誘い出し

彼女の仕事が終わるのを待って

バイクの後ろに乗せて
二人で出かけた。

高校生が気の利いた
デートスポットなんて
分かるはずもなく

夜景を見ながら歌を聴くとか
駐車場で話をするとか
そんな時間を一緒に過ごすだけで

僕は天にも登る気持ちだった。

相当迷惑だったと思うが
次第に彼女も

僕の気持ちを
少しづつ受け入れてくれた。

いつも肝心なところで
彼女は

「貴方は東京へ行くんでしょ?
そこでいい女(ひと)見つかるよ」

そう言って
はぐらかしてばかり。

卒業と上京が近づいてきた頃

「7年間東京に行って
 がんばってくるから
 それまで待っていて欲しい
 そしたら一緒にお店をやりたい」

みたいなこと言った
18歳の僕に
(ギヤー!!は・・・恥ずかしい!!!)

「貴方のことは好きだけど
 7年間は待てない。

 東京へついても行けない。

これから貴方は
 たくさんの人と出会うし

やらなきゃいけないこと
あるんだから

 私のことは忘れて
 東京で頑張ってらっしゃい!」

「じゃぁ東京行くのやめて
 こっちで(山形)学校行って
 お店で働く」

 と引き下がる僕に

 「男だったら
  女一人のために自分のやりたいこと
  曲げちゃダメ!」

ズバッと言い放ち

僕は決定的に
フラれることになった。。。。

その時、
「あの時の高校生を
 選ばなくってソンしちゃったなぁ」

と彼女に思ってもらえるように
一生懸命仕事を覚えて腕を磨き

地元に帰ってお店を出す!

そう決意したんだ。

東京へ旅立ち
新しい生活が始まると

あれだけ好きだった人のことを
思い出すことも
だんだん減り

あれだけ未練たっぷりで
もう誰も好きになるもんか!

と豪語していた自分にも
あっさりと好きな人が出来た。

いつからか彼女の
苗字が想い出せなくなり

アレ?
どうして????

名前さえも
思い出せなくなった。

写真やもらった手紙さえも
処分してしまっていたから
もうどうしょうもない。

覚えてるのは
一緒に過ごした思い出の中の
彼女の顔と声。

そして僕が呼んだ
呼び名だけ。

ふと
僕が今そうであるように
彼女は今頃きっと

僕の知らない誰かと
結婚をし

子どもを生んだりなんかして
幸せな家庭を築いてるんじゃないかなぁ?
と思うが

苗字も名前も忘れてしまった
今になっては
確かめる術はなく

それを僕は想像したり
願ったりしか
出来ないのだけれど

【あの時の高校生】が
 約束通りに地元に帰ってお店を出し
 こんなにがんばってるんだよって
 
いつかどこかで
彼女の耳に
届くといいな

そんな思いが
胸の中にはあって

僕がガンバれるモチベーションの
ひとつにずっとなっている。

たった一枚一緒に撮った写真を
トレンディドラマの真似して
部屋の中で燃やしたら

思ったよりも炎が大きく
ボーボー燃えて
危うくボヤ出しそうになって
かなり焦った。

恋愛も写真の処分さえも
ドラマのようには
行かないことばかりだと

思い知った
18
歳の春。

26年前、
僕の背中を押してくれた
名も忘れてしまった彼女に

今の僕があるのは
貴女のおかげだよ
「ありがとう」

と言いたい。

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